ニュース

日本の賃金と労働生産性

毎年この季節になると私の会社の部下(主にフランス人)の給与とボーナスを決めています。会社の業績と連動してボーナスを支給するのは普通だと思うのですが、欧州の人たちは当然のように基本給の値上げを要求し、会社も当然のこと全社員一律〇%といった具合に回答していることに日本人としては違和感を覚えていました。

日本で部下の評価をするときに、基本給の値上げは皆が要求するものでも享受できるものでもなかったからです。

3月17日の日経新聞電子版の記事「働き方、「世界標準」なお遠く 賃上げの力強さ欠く」を読んで違和感の原因が分かった気がします。ちなみに私はこれまで3社で勤めたことがありますが、労働組合が毎年ベースアップを要求するような企業に在籍していたことは
ありません。

記事のなかで2000年から2019年にかけての主要国の平均賃金の伸び率を紹介しています。00年比で2019年は米国と英国が約7割、フランスやドイツで5割近く上昇したのに対して日本は5%弱の減少、主要国の中では唯一の減少でした。

欧州主要国の中では比較的貧しいと言われているイタリアも00年比で約4割賃金が上昇している。これは驚きでした。ただし、失業率については考慮されていない気もしますので、鵜呑みには出来ません。また、賃金だけが上がっているのではなくて、合わせて物価も上昇しているので、賃金の伸び率だけ皆が裕福になっているわけではありません。フランスの従業員たちがベース賃金のアップを当然のように要求する背景は「周りも上がっているから」という感覚があったと思います。

同じ記事の中で米国と比較した労働生産性(就業者1人あたりが生み出す付加価値)の低さについても言及していますが、賃金、物価が上がっていないのであれば、一人当たりの就業者が生み出す価値も他の国と比較して低いのは当然な気もします。当然その点は考慮しているかもしれませんが。

私が社会人になった2000年ごろと現在を比較してモノの値段が変わったかと言われれば、日常生活する上では商品の値段は変わっていないと思うと、近年は日本だけ特殊な環境で経済が成り立っていると感じられます。

物価が変わっていない日本の状態が良いか悪いかはわかりませんが、海外と比較して大きな差が出てきてしまっているのは事実だと思います。海外の人から見ると日本の様々なものが安く感じられ、買い漁られる日も近いのでしょうか。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です